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横山賢二 新聞記事


【7】「知」と「情」

高知新聞 1993年(平成5年)3月24日(水曜日)

 

 今日、われわれの社会は多くの難問を抱えております。政治、経済、教育、環境とすべての面で行き詰まっております。一方、文明が進むとともに人類はかってないほど膨大な知識を蓄えました。しかし不思議なことに、これほど知識を持ちながら多くの問題は一向に解決に向かっては進まず、それどころか問題はますます深刻化するばかりです。一体、どこに問題があるのでしょうか。

 これは、ちょっとうがった言い方ですが、問題の解決を「知識」に求めるからではないでしょうか。

 「知識」でなければ他の何に求めるのかと言いますと、私は「情」だと思います。「知」ではなく「情」です。人の「情」がまず濁っているから、それが「知」に伝染して、その結果、物事がうまくいかないのです。だから物事の根本は「知」ではなく「情」です。ところがわれわれは今まで「知」が大事だとのみ思ってきました。ここに決定的な違いがあるのです。

 そういう目で現実の問題の政治腐敗を見てみますと、これは政治家に知恵が乏しいのではありません。実はその反対です。しかし「情」が濁っているのです。「情」が澄めば汚職はなくなります。

 少年の非行問題、これもただ知識の詰め込みではなく「情」を豊かに美しく教育していけば、おのずとうまくいくはずです。環境問題にしても、今は大体金と技術に頼っているようですが、一人ひとりの「情」が澄んでくれば空き缶一つほうり捨てにはできませんし、自然破壊など思いもよらぬことです。

 このように、いろいろな問題を「情」という観点からもう一度見直してみてはどうでしょうか。

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