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2018.05.27up

横山講演録(4)


対談 小原實晃・横山賢二 第2部 「心の構造と大脳」

【17】 自我から真情の世界へ

(横山) 最後になりますが、我々が現在、普通日常的にもっている人間観を、ここでご説明しておきましょう。これは即ち浅い「第1の心」、つまり自我の人間観ということになるのです。主に私の心の構造図の上半分の三角形の説明ということです。

 まず人には「五感」という感覚器官がありますね。これがなければ外界は全くわからない。眼、耳、鼻、舌、身の5つですが、その中でも視覚が働きの大半を占めています。

 しかもご承知のように人によってもそうですが、各生物によってその五感の能力の範囲が桁違いに違っているのも事実でして、犬は鼻、ウサギは耳、鷹は目とその能力には相当な開きがあります。つまり既に感覚のところで、各生物によって世界が違って見えているということです。この「五感」を心の構造図では「前五識」といっています。

 次に来るのが「第6識」つまり「意識」といわれていまして、外界の五感からくる情報を受け取ると共に、快、不快や喜怒哀楽という内心からくる心理的情報も受けとる心の層があるのです。西洋心理学でいう心とはこの心のことで、これを「マインド」といっています。

 次にくるのが「第7識」ということになるのですが、仏教の唯識論では「マナ識」と呼ばれていて、普通はこんな心の層があるなどとは仲々気がつかないのです。つまりここは「意識」の下層にある心の層ですので、既に「無意識」に入るのでして、ここは肉体を維持するために働いている心の層ということになるのであって、本人には無自覚的に「諸本能」が働いているのです。

 そういうことでこれで大体、今日我々がもっている人間観が出てきました。まず肉体と肉体を維持する心の層(第7識)があり、次にその肉体の中に意識(第6識)があり、次に外界からくる情報を受けとる五感(前5識)があるということになるのです。これが現在我々が普通に持っている人間観ではないでしょうか。

 ところで先に、第7識(マナ識)は既に無意識に入るといいましたが、私の持論ではフロイトの説く無意識は、この第7識ではないかと思っているのです。その理由は、フロイトの説く無意識は人が生まれたあとに獲得されたものであって、肉体に閉じこめられたところの無意識のことをいっているのです。もう1つはフロイトは「リビドー」ということをいって、人間の本質は性欲にあるという風なことをいっていますが、この性欲というものは諸本能の1つですから、先にいったように第7識に働いているものです。

 そういうことで、フロイトのいう無意識は第7識(マナ識)のことであって、これを私は「第1無意識」と呼びたいのです。ここまでが岡のいう「第1の心」自我の人間観でして、肉体に宿る心の層ということになるのです。

 ところがフロイトの弟子にユングという人がいて、フロイトの説では物足りない。さらに深い無意識がある筈だといい出すのです。これを「集合無意識」というのですが、ユングはフロイトのいうように生まれてからあとに獲得された無意識のさらに奥に、生まれる前までの生で蓄積された無意識もあるのではないかという考えに至るのです。

 この心の層は既に肉体を出離れていて、岡にいわせれば空間に遍満しているといっています。これはちょっと想像がつきにくいかも知れませんが、私はこれを「第2無意識」といいたいのです。

 この考え方は今では西洋心理学の最先端ということになっていますが、これは既に仏教が古来いっていることでして、唯識論では第8識(アラヤ識)に相当します。蔵識とか含蔵識とかいわれています。

 そうすると先にいった明在系、暗在系という物理学の最先端と同じく、西洋心理学でもここに至ってやっと西洋は東洋に追いついたということになるのですが、皆さんはいかがお考えでしょうか。

 更にいい添えますと、実は仏教はそのまた奥の第9識「真如」という心の層を設定していまして、ここに唯一絶対の「如来」がいるのだというのです。この如来というのは、岡にいわせれば法則、つまり「知」の中心という意味ですが、岡の専門の数学からわかってきたことは「知の根底に情がある」というものですので、その第9識「真如」のさらに奥に第10識「真情」があることが岡によって発見されたのです。つまりこれらが「第3無意識」「第4無意識」ということになるのです。

 そういうことで、第10識「真情」、つまり「第4無意識」が発見されたことで、人の心の根底は「情」であるという大原理が、人類はじまって以来、岡によって提唱されることとなったのです。これが「心の世界」における21世紀以降の人類の羅針盤になるのではないかと私は思っているのです。

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