「岡潔先生と語る 」(2)- 西洋文明の限界 -
【11】 育児、その一
(女性)先程ちょっとお話がありましたけど、幼児期の教育が非常に大切であるということ、私も子供が三人おりますので痛切に感じております。先生のおっしゃるように、こういう現状でいいものかしらといつも迷っております。どういうところにポイントを置いて幼児期を育てていったらいいのか、お話し願えましたら有難いのですが。
(岡)育児ですか。
(女性)小学六年生を頭に三人いるんですけれども、今の社会は点数さえよければいいっていうような、他を押し除けていいっていうような風潮が強くって、それだけではいけないということは本当によくわかるんですが。
(岡)自我を抑えて自己中心でないように教えていかれたらよいんです。自己中心でなければよいんです。
(女性)先程春になれば春の良さがわかるような教育っておっしゃって頂きましたけれども、具体的にはどういうように・・・
(岡)わたしの祖父はわたしに「他()を先にして自分を後にせよ」と、そう訓戒し続けたんです。それ一つだけです。またわたしの父はわたしに「日本人が桜が好きなのは散り際が潔いからだ」と、そう教えたのですが、父もわたしに施した情操教育はそれ一つだけです。そういうふうに一面戒律、一面情操と、その二面から自己中心であることを取り去ろうとした訳ですね。あの教育はあれでよかったと思ってます。
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