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 2023.06.07 up

岡潔講演録(30)


岡潔先生と語る (2) - 西洋文明の限界 -

講演日 :1971年4月11日

於 奈良大安寺

 

横山 賢二

はじめに

 この冒頭にある岡先生の一連のお話「はじめに」は、どこかで読んだという記憶がある方もいるのではないだろうか。実はこのホームページの第2弾「2つの心」で既に取り上げたものである。

 これは「2つの心」の世界観の最終的な結論篇といえるものであって、非常にまとまりがよくわかりやすいと思われたから、先ずはこの「岡潔先生と語る」から抜粋して発表したのである。そして、その他の部分はすべて岡先生との質疑応答であるから、岡先生が当時我々に何を訴えたかったかをジックリと読んで考えて頂きたいものである。

 とにかく21世紀にはいって20年以上が過ぎた今、我々がまだ必死にしがみついている西洋文明 ― 日本だけでなく全世界がそれに汚染されている ― を根底から正確に批判しなければならない時である。それというのも西洋文明が世界を覆い尽くした時期と、人類の自滅の危険性が急速に高まった時期と時を同じくしていることを考え合わせると、これは誰にでも想像できることではないだろうか。

 少なくとも我々は過去何百年、何千年と戦争と平和をくり返してきたことに間違いはないのだが、この地球上から人類が消え去るほどの危険性はかつてなかったのである。また環境問題では、人類が地球上に住めなくなるような危険性もまた今日まで皆無であったと、素人なりに断言できるのではないだろうか。

 一方、我々の日本文明であるが、縄文時代は従来の定説のごとく地球上で唯一戦争の痕跡が見つかっていないのであるが、それは日本人の心の構造(第10識、情の世界)を見てもうなずけることであるし、他方で我々は「情の民族」であるから自然の「情緒」に包まれながら、自然に逆らわず順応して生活をつづけてきたのも想像に難くないのである。

 だから今は人類の存亡をかけた一大転換点であって、第7識「意志の文明」である西洋文明の本質を徹底的に批判し、東洋思想の8識、9識を飛ばして第10識「情の世界」である日本文明を日本人自身が再認識し、それを全世界に広め真の世界平和を実現していくべき時なのである。岡にいわせれば、これから150年をかけて「意志の文明」から「情の文明」に、この地球という惑星の「常識」を転換していくことが、今の日本人に課せられた使命であるといえるのである。これが達成されなければ、人類に未来はないと岡は断言する。

 なお、西洋文明の本質の解明については、「横山講演録」の(6)西洋の心の根底に潜む「意志」で取り上げている。

目  次(下の項目をクリックしてお読み下さい)

【1】 はじめに

【2】 無差別智とは

【3】 西田哲学と第二の心

【4】 東洋の宗教と西洋の科学

【5】 放てば手に満てり

【6】 「わかる」とは

【7】 今の若い人は自己中心

【8】 キリスト教

【9】 人に作れるものは無い

【10】 人の成長とは

【11】 育児、その一

【12】 第一の心は心の道具

【13】 第二の心のよく働く教育

【14】 キリスト教の愛と第二の心

【15】 育児その二

【16】 第一の心の文明

【17】 第二の心は社会に受け入れられるか

【18】 則天去私と第二の心

【19】 西洋文化は浅い

【20】 今僕は高校三年生

【21】 フランスの木の葉には匂いがない

【22】 天皇、防衛、三島の割腹

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