「岡潔先生と語る 」(2)- 西洋文明の限界 -
【4】 東洋の宗教と西洋の科学
(男性)先生の今日の心のお話、大変よくわかるんですが、先生がいつか色紙にお書きになりました、東洋の宗教と西洋の科学を融合して、そして生命の科学を作って、そうして世の中を改善しようじゃないかとおっしゃっておられる。今日お話しの生命現象のところがその科学なんですか。
(岡)西洋人は科学すると云ったら大体五感でわからないものは無いとしてやってますが、あの仮定は勿論間違ってる。変えなきゃいけないんですが、いろんなものをきちきち調べていって見極めようとする意欲を持ってますね。ああいうことは東洋ではあまりやってない。西洋人のあの意欲は学ぶべきものだ、そう思うんです。
それでまあ、融合っていうふうなことを云いましたが、科学と云えば五感でわからないものは無いという調べ方だし、この仮定は勿論間違ってる。だからそういう点については融合のしようはない訳ですね。本当の意味で科学し直さなきゃいけない。と云っても、普通の人の知力ではとても大自然は調べ尽くせるものではない。だから非常にやり方は難しくなりますね。非常に知力のよく働く人はなかなかそんなに生まれてきやしませんし、どうやっていくかは難しくなりますが、難しくてもそうするより仕方がない訳ですね。
ともかく西洋のものはみな間違ってるんです。だけどあそこまで学問、芸術をつくり出した熱心さは買うべきです。大いに見習わなきゃいけない。だけど結果から云えば、学問はみな間違ってるし、芸術は浅い。
(男性)そうしますと先生の今日のお話の生命現象の問題ですね。それが先生のおっしゃる東洋の哲学をもととした、つまり第二の心ですか、そういうものを中心とした生命科学というものを・・・
(岡)ええ、それは第二の心というものがあって、それに無差別智とよばれている四種類の智力が働くのだということを仏教から取り入れなければ、生命現象は到底説明がつきませんね。
(男性)それをもととして社会の改造を考えようと・・・
(岡)ええ、そういう訳です。
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