「岡潔先生と語る 」(2)- 西洋文明の限界 -
【6】 「わかる」とは
(司会)なかなか問題が難しいようですけれども、家庭の問題とか、子供を育てるのに家の子は四才位だけれども、こんな時どんなことに注意したらよいかとか、いろいろあると思うんですけれども、そういう身近な問題からでもいいと思いますし、また先生のご著書からいろんなことを聞いて頂いてもけっこうかと思いますので、極く気楽にやって頂きたいと思います。どうでしょうか。
(男性)「わかる」っていうことですけど・・・
(岡)はあ?
(男性)わかるということ。
(岡)ええ、わかるという・・・
(男性)わかるということですが、今何人かの方が質問されましたが・・・
(岡)ええ。あの、僕、今ちょっと耳遠いんです。出来るだけ大きな声で云って下さい。
(男性)ああそうですか。先生のお話を聞いてわかるとか、つまりわかると云うことですが・・・
(岡)ええ、わかるということ、わかってるということはなかなかわからんのです。しかし、わかってないということはよくわかるんです。新しい教育を受けた大学生の作文を読んでみると、ちっともわかっていないなあと思うんです。いろいろ本も読んでるらしいですが、本を読んだり字引を引いたりよくしてるらしいですが、ちっともわかってない。ちっともわかってないということがわかるんです。ちっともわかってないなあと思わないのがわかるということで、わかってても自分にもわからんのです。ただ、わかってる時は、自信を持って云いすすみ書きすすむことが出来るでしょうけども、わかってないのにそれをやると、自分でも何だか頼りないだろうとは思います。出来上がった作文を読んでみると、何を書いてあるのかまるでわからない。滓のような作文になるんです。
(男性)ありがとうございました。
(岡)大体、統一するものが働いてないから、一遍の文章にならないんですね。
(男性)実は「わかる」ということについてご質問致しましたのは、いま何人かの方が質問をされましたが、僕は率直に云って、わかってないなあという感じ
― 自分自身もそうですが ― 質問された方はみんな、何もわかってないなあという感じを受けました。と云うことは、私もわかってないっていうことだけわかった。
(岡)ええ。
(男性)大変難しいというか、わからんということは先にわかるけれども、そこのところがみんな、先生のご著書をよく読まれていても、わかっていないなあという感じを率直に受けたので、わかるっていうことは難しいんだなあっていうことで、わかるとはどういうことかと思ってご質問した訳です。
(岡)心は合一する働きを持ってる。だから自分がそのものになることが出来る。自分がそのものになることによって、そのものを知るのが本当にわかることです。それ以外にないんです。
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