(※ 解説10)
今まで見てきたように、人の内面外面をとわず人間活動というものは人が自分でやっているのではなく、よく見てみると「造化」がその水面下の部分を受け持ってくれているのだという結論になった。
丸で我々は透明な車に乗って自由自在に走りまわりながら、その車に乗っていることに気づかないようなものである。人はハンドル操作やボタンを押せば何でもできると思っているが、実際はそれだけではなく、複雑巧妙な車のメカニズムがあってこそ人間活動が本当は可能なのである。
例えば人だけではなく、私の家の庭には近所のスズメやメジロがよく遊びにくるのであるが、枝から枝へ飛びまわる彼等のその峻敏さと、失敗することがない彼等のその運動の完璧さには目を見張るのである。
オリンピックの体操競技には大なり小なり失敗というのがつきものだが、彼等は全員が一度も失敗をしたことがない、ということを私はここで証言できる。言ってみれば「妙観察智」によって「造化」にまかせ切る彼等は、こと運動に関しては全知全能なのである。
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