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2013.11.30up

岡潔講演録(9)


「自然科学は間違っている」(3)

【1】 自然科学の仮定

 この、日本は明治の始め、西洋から西洋文明をとり入れると共に、物質主義をとり入れてしまった。物質主義の代表的なものは、自然科学です。で、自然科学というものをよく検討しましょう。自然科学者は、この、暗暗裏にいろんな仮定をおいて、そういうものを自然と言っています。人が現実に居る自然を指して自然といっているのではない。しかもその仮定を明言していない。でかわりにここで申しますから、無茶を言っているか言っていないか聞いてください。

(※解説1)

 一般の科学者は自然科学体系を目の当りにすると、その巨大さに圧倒されてしまうのだが、数学者岡潔にかかれば、その自然科学がこのように「手の平」に乗ってしまうのである。

 「自然科学の根底がどうなっているのか?」を問題にした科学者など、今往古来一人もいなかったに違いない。20世紀も終盤になってやっと一人日本に現れた、それが岡潔である。

 しかも日本の科学者の中で、岡が最も高く評価するのは地球物理学の寺田寅彦(高知県出身)であるが、その虎彦でさえ自然科学を「手の平」に乗せるところまではとても行ってはいない。

 まして、ノーベル賞を受賞された歴代の日本の科学者の方々は、誠に失礼ながら西洋人が造った自然科学という大舞台の上で、上手に踊ることができたというだけではないだろうか。岡はその大舞台の床の強度が、既に怪しいと見ているのである。(ノーベル賞に関する岡の発言は、後々ご紹介する予定である)

 そういうことで、これから我々も自然科学を「手の平」に乗せて調べるという、岡のこの壮大な探求の旅に着いていってみることにする。

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