岡潔 「自然科学は間違っている」(3)の解説
講演「日本民族」より
講演日:1968年11月5日
於:大阪船舶ビル
横山 賢二
はじめに
これからも継続して、数学者岡潔の自然科学に関する発言をご紹介していきたいと思いますが、この岡の「自然科学批判」が先生の頭の中(前頭葉)に総合像として姿を現しはじめるのは、晩年初期の終盤(1968年)頃からといえると思います。
晩年初期(1960年〜69年)といいますと、その発言内容は人類の文化全般をカバーしつつも、主に仏教哲学による「日本の心」の解明に力が注がれるのですが、やはり何といっても「戦後教育」を早急に変えなければならないとの確信から、「教育論」が主流を占めるのです。
従いまして、この岡の「自然科学批判」も著書の出版がとまったあとで佳境に入ってくる訳でして、残念ながらその主張は当時の日本にはあまり知られず、全く理解されないまま今日に至ったといっても過言ではありません。無論、これは「人類自滅」への必死の警鐘乱打と並行して行なわれたことは申すまでもありませんが。
そういう訳で、これからご紹介する岡の「自然科学批判」は先生亡きあと初めての公開といってもよく、今日の自然科学の人類を巻き込んでの暴走に対抗する唯一の手段、唯一の理論となるのではないかと私は思うのです。
次の手は百年の後か夏木立 岡潔
猶、岡の「教育論」につきましては、既に復刻された著書の随所に散りばめられていますが、その中でも入門篇としては「情緒と創造」、結論篇としては「日本民族の危機」の中の「教育の原理」が有名です。
目 次(下の項目をクリックしてお読み下さい)
【
1】 自然科学の仮定
【
2】 空間と物質
【
3】 仏教と自然科学
【
4】 時間の観念
【
5】 時の観念
【
6】 道元の有時
【
7】 世界の流れと有時
【
8】 今はローマ時代
【
9】 力の文明
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