(※解説10)
ここがこのお話の最も特徴のあるところなのですが、1日24時間ではないですが、岡は晩年初期における自説である「2400年周期説」をここで持ち出している。
これは如何にも岡らしい非常に大胆な歴史観でして、古代ギリシャ時代が紀元前5世紀頃にローマ時代にかわり、その後ローマ時代が14〜15世紀頃のルネッサンスまでつづく。つまりギリシャ時代が4〜500年、その後のローマ時代が約2000年と見ているようです。
その状況を指して岡は、「人類は今、時代的には4時間が昼、20時間が夜という、いわば北極のような緯度のところに居るのだ」と言っている。そしてそのルネッサンス以後、時代は再び進み4〜500年が「昼」、第1次大戦以後が再び「夜」に入ってしまったというのです。
そうすると現代は、岡にいわせれば「夜」、つまり「暗黒時代」ということになるのですが、逆に我々は「今が人類文明の頂点だ」と思っているのではないでしょうか。しかし、「物質しかない」という考え方が世に蔓延しているとすれば、それを「暗黒時代」と呼ぶ以外にはあり得ないのですが。
「私は人類の知の闇に、明かりを灯すために生まれて来た」 岡潔
(※解説11)
ローマ時代、ギリシャ時代を今の国や民族で言いかえますと、ローマがアメリカに、ギリシャが欧州に対応すると岡はいっている。大脳生理学的にはアメリカが側頭葉文明、欧州が前頭葉文明ということです。
更にうがった見方では、ローマ人が2000年を経て今のアメリカ人に生まれ変わり、同じくギリシャ人が今の欧州の人々に生まれ変わったのだと、岡は後々言いそえている。
因みに、今の日本の現状を見てもわかるとうり、人々はまさに「政治、土木、経済」のことしか頭にはなく、その価値観で社会は動いている。これをアメリカ流のプラグマティズム(功利主義)、いわゆる「ローマ時代」というのでしょうが、「無私の心」の表現である「真善美」という人の理想を欠いた文明は真の文明とはいえず、やがて崩壊へと進んでいく以外の道はないのです。
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