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2013.11.30up

岡潔講演録(9)


「自然科学は間違っている」(3)

【8】 今はローマ時代

 これは造化、即ち大宇宙の主が革命を欲しているということです。実際今、世界中の青年達が騒いでいる。何故こんなことを造化は欲しているかというと、大体こういうことは二千数百年に一度起こるのだということです。そうするとこの前の時はどうかというと、ギリシャという昼の時代、真善美を目標とした時代からローマという夜の時代、つまり政治とか、土木とか、経済とか、そんなものばかりを喜んだ時代、そういうものに役に立つとか立たないとか、そんな事ばかり言った時代、に移ったわけです。ところが今度は文芸復興以後がまた昼の時代です。それが第一次世界大戦以後、夜の時代へ入ってしまっている。すでに50年間位夜の時代です。ローマ時代がどんなか見たかったら、今の世界の有様を見れば、これがローマ時代です。真善美を喜びやしません。又、真善美によって人は行為しません。今の行為の仕方は強い者が偉い、偉ければ何をしても良い。これが国の有様です。

(※解説10)

 ここがこのお話の最も特徴のあるところなのですが、1日24時間ではないですが、岡は晩年初期における自説である「2400年周期説」をここで持ち出している。

 これは如何にも岡らしい非常に大胆な歴史観でして、古代ギリシャ時代が紀元前5世紀頃にローマ時代にかわり、その後ローマ時代が14〜15世紀頃のルネッサンスまでつづく。つまりギリシャ時代が4〜500年、その後のローマ時代が約2000年と見ているようです。

 その状況を指して岡は、「人類は今、時代的には4時間が昼、20時間が夜という、いわば北極のような緯度のところに居るのだ」と言っている。そしてそのルネッサンス以後、時代は再び進み4〜500年が「昼」、第1次大戦以後が再び「夜」に入ってしまったというのです。

 そうすると現代は、岡にいわせれば「夜」、つまり「暗黒時代」ということになるのですが、逆に我々は「今が人類文明の頂点だ」と思っているのではないでしょうか。しかし、「物質しかない」という考え方が世に蔓延しているとすれば、それを「暗黒時代」と呼ぶ以外にはあり得ないのですが。

 「私は人類の知の闇に、明かりを灯すために生まれて来た」   岡潔

(※解説11)

 ローマ時代、ギリシャ時代を今の国や民族で言いかえますと、ローマがアメリカに、ギリシャが欧州に対応すると岡はいっている。大脳生理学的にはアメリカが側頭葉文明、欧州が前頭葉文明ということです。

 更にうがった見方では、ローマ人が2000年を経て今のアメリカ人に生まれ変わり、同じくギリシャ人が今の欧州の人々に生まれ変わったのだと、岡は後々言いそえている。

 因みに、今の日本の現状を見てもわかるとうり、人々はまさに「政治、土木、経済」のことしか頭にはなく、その価値観で社会は動いている。これをアメリカ流のプラグマティズム(功利主義)、いわゆる「ローマ時代」というのでしょうが、「無私の心」の表現である「真善美」という人の理想を欠いた文明は真の文明とはいえず、やがて崩壊へと進んでいく以外の道はないのです。

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