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2013.11.30up

岡潔講演録(9)


「自然科学は間違っている」(3)

【4】 時間の観念

 ところが、そういうのが物質である。「物質が自然を作っている。その自然の一部分が自分の肉体である」。この次がまたひどい。「それ以外に時間というものがある」、と云う。では時間というのはどう云うものか誰か知っているか、ただ観念的に時間といっている以外何か時間について知っているかと言いますと、時間ってどんなものかと聞きますと、例えば東から日が登ってから、次に日が登るまでの間が24時間だという。これは何も時間じゃあないでしょう? 空間でしょう? それでは今は? というと、7時2分だと云う。これだって針の位置でしょう? 大針小針の位置でしょう? 空間であって時間ではない。それを時間というものがあると信じている。あるとしか思えないらしい。イズムというのはおそろしいものですね。人はそうすると今、自然科学者によりますと、貴方々自然科学を信じてますから、やっぱり同じことです。大抵の日本人は時間の中に住んでいると思っている。

(※解説6)

 「日が東から登って、また東から登るまでが24時間だという。これは何も時間ではない、空間でしょう」とは我々の日常の既成概念をブチ破る、誠にすごい認識ではないだろうか。そう言われれば、成程そうかと気づかされます。

 更に、「今、7時2分だという。これも空間であって、時間ではない。」このような岡のちょっとした言葉で、我々の世界は一瞬にしてガラリと変わってしまうのです。岡はこのように、極上の新鮮な「眼」を以って世界を見ていくことを、暗に我々に教えてくれているのです。

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