(※解説16)
これから登場するのが私の知る限り最もスケールの大き い日本歴史であって、一般の方々には想像もつかないものに違いない。何しろ岡が主張する日
本民族30万年の歴史を、例の如く一掴みにしようというのである。
それというのも岡がいつも持ち出してくる、人類に共通
の心の構造が最終的にわかったからこそできることであって、目先の目にみえる考古学的事実
などよりも万年単位でしか変わらない心の構造の方が、遙かに嘘をつかないからだと岡はいう
のである。
作家で有名な井上靖が岡と対談した時のことであるが、
井上は岡にこういっている。(岡潔集第5巻)
「岡先生は新聞に『上代は民族が日本列島へ居ついた末世だ』と書いておられましたが、あ
のときは本当に参りました。」
岡が当時としては大変評価した井上靖でさえ、上代が日
本歴史の出発点だという先入観を持っていたということになるが、岡は逆にその上代を歴史の
末世だと位置づけていることに、強い衝撃を受けたということだろう。
さて、何度もいうことだが、西洋、東洋、日本とでは基 本的にいって心の構造が違うのである。西洋は第7識、これをマナ識と仏教ではいい、岡はそ
れを「第1の心」といっている。次に、今日の中国や韓国などではなく、本来の東洋は「第2 の心」の中の第8識(深い意)か、もしくは質の良いのは第9識(深い知)の世界であって、
日本は実は第10識(深い情)の世界なのである。
岡は晩年、この第10識が心の世界の根底であることを 発見したのである。そうすると心の世界の規準からすると、世界の中で「日本が最も進んだ
国」ということになるのだが、果たしてそれを認めてもらえるかどうか。そこにこの解説の全 てが掛かっているのである。
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