「歌で読みとく日本歴史」
第2部 「神代(かみよ)の文化」
「昭和への遺書」岡潔著
【12】天意の雪嵐
私は高知県の小・中学校長会で「仏教の言葉を借りて明
治以前を語る」という内容の話をしたことがある。そのとき私は言った。「今日はじかに神代
の話をしたかったのであるが、勉強が足りなくて出来なかったのである。」
そして、その夜のことである。翌日帰る積りでいると、
突然雪を伴った嵐がおそって来て、汽車も船も出なくなって帰れなくなってしまった。
私は何もすることのない高知市の一室に、もう1日いる
ことになった。私の関心はおのずから神代という言葉に集中され続けていたらしい。その夜暁
近くなって少しまどろんで覚めると、私の大脳前頭葉の映写幕に、歌と俳句とで書かれた日本
史が展開された。私はそれをもとにしてこの随想を書いたのである。
心の1か所に関心を集め続けていると、内容の無いもの
が姿を持って来るという心の大切な働きのよい例である。
それよりも、私はこの突然の雪嵐の襲来を天意だと思っ
ている。
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