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横山賢二 新聞記事


【16】社会の混乱は競争原理から

高知新聞 1995年(平成7年)11月1日(水曜日)

 

 人はまず自然の恵みによって支えられている。水や空気や食料や、その他多くの物質がなければ生きられない。人は多くの職業の人々によって支えられている。衣食住はそのために可能である。人は周囲の多くの人々の心の支えを受けている。家族、親類、友人、また多くの教えを受ける人々によってである。

 社会をこういう目で見てみると、どこにわれわれが始終口にしてやまない「競争原理」というものがあるというのか。

 人はいくら金があっても、漁民がいなければ魚は食えないし、農業にいそしむ人々がいなければ米は食えない。産業に従事する人々がいなければ衣食住はできないのである。

 そうであるにもかかわらず、他人をけ落とさなければ人は生き残れないと多くの人は思い込んでしまっている。これは一体どういう訳なのか。人が本当にそうなったら、一人では生きて行けないないのが実情ではないのか。今、社会にまん延している「競争原理」とはこういう妄想なのである。

 若い人たちに言いたい。大人たちが言ってる「競争」という言葉は、あれはお互いに自らの欲望の熱にうなされて口走っている寝言であると。あなた方はそういう寝言には耳も貸さず、自らの目と自らの心で社会をもう一度見直してもらいたい。社会は決して競争によって成り立っているのではなく、人と人とが支え合うことによって初めて成り立っているではないか。今日の社会の目に余る混乱は、この「競争」という寝言の成せる業なのであると。

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