okakiyoshi-800i.jpeg
2018.05.11up

横山講演録(4)


対談 小原實晃・横山賢二 第1部 「情の世界と物理学」

【6】 2つの宇宙

(横山) 「デビット・ボームという非常に高名な物理学者。ホログラフィー宇宙モデルと呼ばれているボームのその仮説は、素粒子の不思議な動きを説明するために生まれた物理学上の宇宙モデルであり、そこには神秘主義や宗教の色彩は全くありません」とありますね。

(小原) つまり反物質はあるんだと。

(横山) これは宗教ではないということですね。

(小原) 反宇宙はある。だからこの宇宙があるというのを彼はこう説明したんです。宇宙がある。あれば必ず反物質があるというのを発見したのはディラックだけれども、彼(天外)はそれをもういっぺん逆転するんです。こっちがあるから、ここがあると見た。反物質の世界があるから、目に見える世界があるんだと見たんです。

(横山) ディラックは対等に見てる訳ですか。

(小原) ボームもそうですよ。ボームも対等に見てるんですよ。ところがこの人はボームの理論を利用して・・・

(横山) この人というのは?

(小原) 天外さん。ボームがいった訳ではないんですよ。ボームの理論を天外さんは、こっち(反物質の世界)があるから、こっち(物質の世界)があると見たんです。それが正しいと思いますが、本当は。

(横山) これはやっぱり東洋人の発想ですね。どうしても西洋人は物質主義の目で見てるからね。時間空間は離れられない。ということは、それでいいですね。岡の世界観と融合できましたね。

 ここで一言いい添えておきたいと思いますが、岡は物質というものをどう定義しているか。「物質とは途中は、たとえば赤外線写真にとるとか、たとえば望遠鏡や電子顕微鏡を使うとかいろいろ工夫してもよいが、最後は肉体に備わった五感でわかるものである」とこういっている。

 だから目に見えないブラックホールはどうかと思う人があるかも知れませんが、それもやはり質量やエネルギーがある訳ですから、やはり物質に入る訳です。

(小原) 反物質の発見なんですよ、ディラックは。だから僕の教え子達は物理の大学院へ何人かいきましたけども、その連中はみんなディラックが大好きになっていくんです。僕が強調するから。

(横山) やはり東洋人じゃないと、なかなか実感が湧かないと思います。

(小原) そうね。だからディラックはやはり日本民族じゃないかと思うしかないですよ。だってみんなヨーロッパのそうそうたるノーベル賞をとった連中も、ここでしか陽子や電子の動きが説明できなかったんです。

(横山) ああ、ニュートン時空の方からね。

(小原) 結局、固有時間から見る訳です、ディラックは。湯川さんも、同じ時期に。そこで反物質を発見する。

(横山) よくわかりました、大きい流れは。なかなかこんなことは素人では、これぐらい簡単明瞭につかめといっても無理なことです。

(小原) そういうところは、これからここで耐えていこうと思います。そうすると岡先生も・・・

(横山)それは完全に融合しますよ、岡の世界観とは。

(小原) 岡先生をバックアップすることができる。そうしませんと岡先生のことに対して、ちょっと納得できないという立場の人を説得することができない。

(横山) これはなかなか貴重な情報です。

(小原) だから横山さんがいったように、納得できないということを認識することは大事なんですよ。何かわかった気持ちになるで終ってると、こうなかなか譲らないんですよ。すぐ忘れますよ、側頭葉でわかってるだけですから。

(横山) そうするとモナドというものが最終的な時間論の終着点ですか。

(小原) この人はね。だけど僕はもうモナドという言葉を使わないです。誤解を招きますから。

(横山) それと岡がいう「時」とは大体同じものだと私も思いますが。

(小原) 僕自身はそう思っています。だけどモナドという言葉は使いません。

(横山) この中込さんですが、この人が更に思想を発展させるとすると、今度は子供の世界へ入っていくといいと思います。子供の心の構造の発達図を解明すれば、そこからまだ奥へ行けると思います。岡はそれをやってるから、まだその奥へ行ってるんです。

(小原) 彼が基礎論にのめり込んだのは僕と同じで、論理の世界へ行くとそこへ行くんですよ。だから基礎論の方向にも行ったんです。つまり論理の世界、シンキングの世界を突き詰めていくと、本当に赤ちゃんの世界へ行くしかなくなってくるんです。

 それをいったのがゲーデルです。不完全性定理を発見した。これも非常におもしろい話になってくる。岡先生のいってることとつながっていく可能性があります。そうですね、赤ちゃんの世界、そこへ行かなきゃいけない。あの懐かしさの世界へ行かなきゃいけない。

 これですよ。なぜ赤ちゃんが生まれて懐かしそうな世界で何を見てもうれしいという世界へ行くかというと、これを持ってる訳です。その人その人の固有時間の集積を持って生まれてくるから、全てが懐かしく見えるんです。本当に岡先生がいってる「時」というのはこれですよ、やっぱり。モナドが持ってるものですよ。集積なんです。

Back    Next


横山講演録(4)対談 小原實晃・横山賢二 topへ


横山講演録 topへ