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2015.06.11up

岡潔講演録(15)


「秋が来ると紅葉(もみじ)

【5】 共産主義批判

 今、世界のリーダーシップは欧米人がとっている。だから世界がどんな有様か、ちょっと描写すればいい。今は共産主義というものがある。これはのちに、もう一度いう機会があると思いますが、ともかくこんなもの知性ではない。狂信者の集団です。「左手にコーラン、右手に剣」です。やり方見てるとそうです。迷惑な話ですが、そうなんです。大体、そんなものが世界にあるというのが、そもそも絵の1つです。

 それと日本との関係はどうであるかいいますと、日本は今、石油の大部分をアラビア、ペルシャに求めている。もし、この石油が来なくなったらどうかといいますと、このおびただしい自動車は1台も動かなくなる。自動車なんか動かなくても、まあよろしいが、工場の大部分は止まってしまう。そうすると、おびただしい失業者が出る。そうすると、共産主義は相当行き渡っていますから、日本は共産主義になる。

 日本は共産主義になればどうなるかというと、今、国が近代国家として生きて行くためには2つの力が要る。1つは創造力。もう1つは、よく働くことです。アメリカはマネージメントといってますが、この2つが力です。ところが、日本の共産主義の先生方の教え方見てますと、これはもう2つとも駄目です。

 そうるすと独立国を作って行くことはできない。そうすると、どっかの属国になって、属国だけれどもチェコのように独立国を作るということはできない。だから、かつての蝦夷のようになり、それからやがてアイヌのようになる。その次は消え去る。こんな風です。

 これを説明するためには、共産主義の先生方に教えてもらってたんでは想像力もマネージメントも―マネージメントじゃない、よく働くという力。これ、2つとも到底駄目だということを説明すればよろしいでしょう。だから石油が来なくなれば滅びる。

(※解説5)

 この5章から8章までは、当時の世界情勢に対する岡の発言を取り上げてみたい。この世界情勢に関しては、これほどまとまった形で詳細に発言した箇所は、流石に岡の資料の中でも珍しいので、敢えて全文をご紹介するのである。

 まずここでは当時、一世を風靡していた共産主義に対する批判から岡は入っているのだが、「ともかく、こんなもの知性ではない。狂信者の集団です」とは誠に手厳しい。しかし、数千万もの犠牲者を出したといわれる20世紀の共産主義の歴史を考える時、その言葉は共産主義の本質を美事に言い当てているのではないだろうか。

 当時の日本の知識階級が傾倒していたハイカラ思想の共産主義を、岡は既にこう断罪しているのだから、岡が長く日本の思想界から無視されつづけたのは当然のことかも知れない。

 さて、日本の共産主義に欠けているのは「創造力」と「よく働くこと」とは、考えてみれば誠に鋭い指摘である。当時の労働運動はもっともらしい言葉を並べ立てていたが、裏をかえせば「より高い賃金をもらって、できるだけ働かないこと」が目標であったといってもよいし、他方政府や企業の欠点を捜しだしては不満感を煽ることばかりしていたのだから、真の「創造力」など働くわけがないのである。

 現在、内政外交と大車輪の活躍を展開する自民党の安倍政権は、「創造的」にいかにも「よく働いている」という印象を受けるのだが、それに比べると阪神淡路大震災当時の社民党の村山政権や、さきの東日本大震災当時の民主党の菅、鳩山両政権などは、まさしくそれと正反対の印象を受けるのではないだろうか。

 因に「大震災」であるが、岡は晩年こういう風にいっている。「地震は天照が起こすんですよ。天照は純真無垢な子供のような神様。だから大地震は天照のお怒りです」

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