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2015.06.11up

岡潔講演録(15)


「秋が来ると紅葉(もみじ)

【6】 アメリカとの関係

 ところがソビエットなんかにしても、ソビエットは潜水艦をたくさん持ってる。それから、その国を共産主義にすることを、そこの人民を解放するといってる。それだったらなぜ石油を来ないようにして石油源を絶って、日本を共産主義化しないかというと、これはアメリカの第7艦隊がインド洋、シナ海を遊弋(ゆうよく)している。その背後にアメリカの核兵器が睨んでいるからです。だから日本民族は今、実際好む好まざるに拘わらず、アメリカの軍事力の庇護のもとで生きている。

 ついでにアメリカとの関係をいいますと、今、日本の工業的生産品の販途の半分はアメリカへ売れている。で、アメリカがそれを買わんようになりますと、日本は今、大抵の工場は銀行から金を借りて工場を作ったり、工場を改良したりしているから、半分しか売れなくなると利益が半分になりますから、そうすると銀行へ払う金の方が遙かに高くなる。そうすると段々赤字が積もって行って倒産する。

 どれくらいそうなるかというと、恐らく7割ぐらいは倒産する。今の日本で実業界が7割の失業者を出したら、必ず共産主義化します。そうすると滅びるというところへ行くでしょう。

 だから、アメリカの軍事力の庇護のもとに生きていて、アメリカがお得意になってくれてるから、日本民族は生きてるんだということを知らなきゃいけない。一面、アメリカ色は払拭しなきゃいけないし、他面アメリカのお陰で生きている、生存を続けているという日本民族の現状であるということを知ってもらいたい。

 アメリカと仲良くしなきゃいけないが、卑屈であってはいけないという難しい立場にある。仕様ないそんな立場へ20何年かかって自分を持って来たんだといいたい。まあ、ともかく今はそうです。

 が、そういうことを言ってんじゃない。世界の状勢でしょう。世界の状勢がわかるでしょう。

(※解説6)

 当時、岡は日本の共産化を最も恐れた。それは岡がニニギノ命から数えて「10万年」はつづくという天皇制をはじめ、日本が長い年月をかけて培ってきた、今世界の注目を集めている日本の伝統文化を全て破壊する恐れがあったからである。

 それは即ち日本民族の滅亡を意味する。日本の滅亡は日本自身のためだけではなく、人類を滅亡から救う唯一の可能性のある民族が、この地球上からいなくなることだと岡はいうのである。

 そのためには「アメリカと仲良くしなきゃいけないが、卑屈であってはいけない」というのが岡の日本への忠告である。今まで日本はアメリカに対して余りにも卑屈ではなかっただろうか。

 卑屈とは「自らを卑下し、他人にへつらうこと」と辞書にはあるが、アメリカはあくまでも覇権主義、つまり第7識の「力の思想」が染みついていて、それをいつまでも卒業できない国柄なのである。

 しかし、日本は第10識「情の世界」の文化を既に形成している国柄なのだから、世界的に見ても「力の思想」に人類がかくも苦しんでいる今こそ、日本は日本独自のやり方を自信をもって世界に発信し、アメリカに対しては「是は是、否は否」として、これからはアメリカを喩し導いていく役割を荷っているのではないだろうか。日本は今やそれができる国であるし、人類全体のためにも是非それをしなければならない国なのである。

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