(※解説1)
「人生意気に感じては成否を誰かあげつろう。消えざるものはただ誠」
これは明治の詩人、土井晩翠の「星落秋風五丈()が原()」の一節である。岡は晩翠の詩を随分暗唱していて好きである。私は思うのだが、ひとの人生から「意気に感じる」ということを抜いてしまったら、一体何が残るのだろう。私などはこの人生で、その「意気に感じる」ことばかり選んでやってきたような気がするのである。
私にとって利害や損得などは二の次であったし、この「意気に感じる」ことを目標に人生の梶をとってきたつもりであって、それこそが生き甲斐であり、喜びであったのである。それに倍する辛いことが多少はあったにも拘らずである。
中でも私が岡潔研究会をひとり立ち上げた頃は、岡の本は全て絶版となっていたし、岡潔の名を口にする人など、ほとんどいなかったのである。私は何としてでも、この思想だけは世に残したいと思ったのである。
Back
Next
岡潔講演録(16)嬰児()に学ぶ topへ
岡潔講演録 topへ
|