岡潔講演録(17):「1969年の質疑応答」解説:【6】月とか宇宙とか
岡潔講演録(17)
「1969年の質疑応答」
(質問) 真我の中にね、空間、宇宙があるということね、難しいと思うんですけど。
(岡) 前頭葉にあるん!それ取っちまえというんです。それは悪いから取ってしまえといってる。空間は悪いんです。
(質問) それについて、月とか宇宙とか・・・
(岡) 駄目。皆取っちまわなきゃ。宇宙は広いっちゅうのは悪いんだから。前頭葉の働きでわかるんです、大小遠近自他の別は。これ皆取らないと。さっきいった芭蕉の俳句、大小遠近彼此の別はないんです。それをぶち壊さなきゃ。大小遠近彼此の別は物質です。その壁を破らなきゃ、本当のものはわかりません。めくらなん! それが破れん間は。
当時はまさにアポロ計画で、人類が初めて月へ到達して話題になった頃であるから、こういう質問が出るのは当然のことであるが、岡は目に見えない「心の世界」にこそ実在性があり、時間空間の中の「物質現象の世界」には実在性はないという考え方であるから、当然のことながらこのような回答になるのである。
従来の東洋の宗教や思想は 、暗にこのことを主張しているように見えるのだが、こういう風にはっきりと明言している人は、今日でも珍しいのではないだろうか。
因に「大小遠近」は「空間」ということであり、それを岡は「妄性」といい、「自他の別」を「邪性」といっている。共に「第1の心」の特徴である。
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