「1971年度京都産業大学講義録第5回」
【11】 福沢諭吉
福沢諭吉が馬鹿なやつで、自由とか権利とかがいいって、こう云ったんです。福沢諭吉、ビールス病の元祖でしょう。
これはどう云うべきかと云うと、自我というのは小我であって、真の自分ではない。しかし人類進化の現状ははなはだ低く、多くの人は自我を自分と思いがちである。だから他に対してはその自由や権利を認めるのがよい。そう云うべき。なお念のため、自分がそういうものを主張するのは元より間違いである。そこを間違えてるんですね。
他が個人主義、自我を自分と思ったり、あるいは物質主義、物質的幸福を喜んだり、たとえそんなことをしていても、嬉しそうにしている。そうすると余計な詮索はしないで、自分も嬉しくなりなさい。こちらに意味がある。自分が主張せよって云ったんだから無茶です。そうするとビールスの行動になってしまう。
1300年程の間、仏教は小我と真我の区別を説いて来た、明治の初めまで。福沢諭吉、それがわからんて云うんだから、実に馬鹿です。それを今日、大思想家だと云ってる、思ってる。福沢諭吉は馬鹿だからって云うようなことを云ったんです。自動車の中で。そうすると助手席に乗ってた若い人が、後ろを振り返って僕をにらんだ。
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