「真我への目覚め」
【5】 理性と無差別智
普通の人が、経験することによって知っている知力は、理性というような型の知力です。この知力は、まず、意識してでなければ働かない。つまり、働かそうと思い、その努力を続けている間だけしか働かない。
第2の特徴は、少しづつ、順々にしかわかっていかない。しかし、人が経験する知力に、まれにではあるが、こういうものでないのがあります。例えば、数学上の発見の時に働く知力は、こんな型の知力ではない。このそうでない型の知力を一番経験するのはどういう時かというと、仏道修行の時です。
仏教の言葉で説明すると、まず、その知力は、無意識裏に働くのです。働かそうとも思わず働かしているとも意識しないのに働く。そして、結果が出る。その結果の出方は、一時にパッとわかって、順々にわかっていったりするのではない。この2つの特徴をもった知力を〝無差別智〟というのです。
無差別とは、無意識というような意味です。仏教の修行をしますと、無差別智がよく働く。そして、我々が肉眼を使って、いろんなことを知るように、無差別智を使って修行を深めていくのです。それで、仏教には、ごくまれですが、非常な高僧が出る。仏教が、日本に渡ってから、すでに1300年、ごくまれに出る非常な高僧の経験を書き記したものによって、無差別智のことは非常によくわかっています。
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