「岡潔先生と語る 」(3)- 西洋の真似はやめよ -
【17】 個人主義では何もできない
(男性)昭和維新というようなことが云われておりますけれども、世の中を改革して行く為にはどういうことをやって行けばよいと先生はお考えでしょうか。
(岡)日本人が西洋の真似をしてるのを、これはいけないと気付かせて、唯物主義、個人主義、これを取り去らなきゃいけませんね。これは一人一人に説いてわかってもろうより仕方ないでしょう。今のように唯物主義的、個人主義的では何も出来ない。
(男性)それで昭和維新が出来ますでしょうか。
(岡)出来なきゃあ滅びますねえ!神々は引き続いて人類を地球上で育てて向上させて行くつもりなのか、それとももうこの辺で星を変えてしもうつもりなのか、その神々の意のあるところはわからない。だから人類は滅びないとは云えません。
唯物主義の根はなかなか深い。あなた方、わたし大分云ったんだけど、「神々が居る」「仏達は居る」とは思えんでしょう。唯物主義を取り去るのは容易ではない。また個人主義を取り去るのも容易ではない。人は末端のところは一人一人別々になってますが、ずっと深い根のところは総て一つになってしまってる。これが真我というものである。人は完全に一人一人個々別々であるという個人主義は全く間違いなんですが、これもなかなかそうは思えんでしょう。特に個人主義が間違いだということがよくわかってもらわなければ、社会機構は変えられない。容易じゃない!
自分を忘れる、つまり自我を超えると、人は肉体が死ぬのは厭だなどと思やしません。日本人は容易に自分を超越することが出来る。だから死ぬことを何とも思わなかった。ここのところは、今の人はわからんのですね。夢の中で自分が死ぬシーンが時々出てくるでしょう。その時死ぬのは厭だなあと思わないでしょう。真我の世界においては、肉体が死ぬのを厭がりはしません。これを知らなきゃいけない。
個人主義とか民主主義とかいうものは完全な間違いです。こんな生活続けてたら、単細胞からここまで向上して来るはずはない。
(男性)先生のおっしゃるように第二の心の内容が非常に重要だと云うこと、よく理解出来るんですけれども、それをどのように認識し充実さすことが、将来の日本を滅亡から救うことにつながって行くのか・・・
(岡)第一の心の弊害が非常にひどいんですね。これを避けなければ。公害がやかましく云われてますが、それよりもずっと害が大きい。
(男性)それから、教育者の立場として、心の内容の充実をはかって行くにはどうすればよいでしょうか。
(岡)教育者は間違ってる。自我主義を教育してますね。だから大学生は全然知情意が働かない!
一体どうしたんだろうというようになってます。第一の心が度を過ごして働くことは非常に害が大きいんです!これを知らなきゃいけない。そしてこの害を除かなきゃいけない。大抵の害よりは大きい。それを見る目が無いんですね。こんな教育をすればこんな大学生が出るという、その大学生は眼前にあるんだから見ればわかるはずだのに、それが見られない。妙観察智が働かないんです。
だからめくらだから、現状がわからんのです。随分ひどい。公害で死にかけている魚のような有様です。ここまで来てから元へ戻せるものかどうか、到底わからない。それで神々の意のあるところはわからないと云ってるんです。単細胞からここまで向上させてくれたことを思うと、ここで地球上から滅ぼしてしもうということは考えにくいんだけれども、日本の現状を見てみると、ここまで来てしまったものを元へ戻すということは至難なように思える。だからどちらを信じてよいかわからんのです。その現状はそれほどひどいと云う現状認識がないんですね。それが困る!
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