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 2013.03.12 up

岡潔講演録(5)


「人とは何かの発見」 岡潔著

【 5】 リンパ細胞の不思議

 ここはまだ、人か造化か分りにくい所かも知れません。が、造化にここ迄向上させてもらって、そして個体、個体についていちいち作って貰っているこの身体、この身体ですが、この身体生きていますね。

 ところが身体が生きていると云うのは、どう云う事かと云うと、身体を構成している数多くの細胞が統一的に働いていると云う事です。そう云う細胞の内には、身体とは肉体的に結び付いていないリンパ細胞と云うものも有ります。

 ところがこのリンパ細胞は、他の身体から入って来たタンパク質を攻撃する。これ拒否反応と云うんですが、それで、私のいとこに病理学の教授が居るんですが、どうしてリンパ細胞が他の身体から、つまり、タンパク質の自他の別を識別する能力があるんだろう、もう何も分らなくなってしまうと云っていますが、とも角、そんな風に銘々の細胞が働くのは、銘々の細胞に心があって働らかしているんだと、そう思います。

(※ 解説7)

 同じリンパ細胞であっても肉体が違えば、たとえ外見は同じでも全く別の働き方をするということですが、これは何故でしょうか。とても自然科学ではわからないと思います。仏教であれば、それは妙観察智の働きであると答えるのです。

 妙観察智とは自分が対象物になり切ることによって対象物の心を知るという直観でして、一つ一つのリンパ細胞はこの直観を働かせることによって、同じ個体のリンパ細胞か別の個体のリンパ細胞かを、お互いに識別し合っているということでしょう。

 ところで、このリンパ細胞に関連して岡先生が「ガン」の原因について語った1969年時点での発言がありますので、次に挙げてみます。

 「前頭葉(第1の心)なしにはガンは起こらん。これが本質的なことです。無理にこしらえることはできる。が、自然発生のガンは前頭葉を持たない動物にはない。欲界です、これは。(省略)頭頂葉(第2の心)なんかが肉体を支配するのが正しい。私はそうなってるとガンは起こらないと思います。少なくとも頭頂葉が体を支配してたら、無闇に背が伸びたり、おかしな顔つきになったり、そういうことは決して起こらない。頭頂葉が支配しないから、前頭葉がいろんなこと言いだすんです。欲界の心がね、ここは欲界なんです。」

 最近の医学でも、ガンの原因は物理的なものにあるよりも、ストレスや心の状態が大きく左右するということを言い出していますが、岡の考えもそれと同じ方向のものです。ただ、岡の場合には今から40年以上も前の発言であるということに驚かされます。

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