(※解説30)
「人類は形の向上を一通り終って、心の向上の段階にさしかかっている」と岡はいっているが、「形の向上」とは進化論が示すように今日の我々の肉体と、それに宿る「第1の心(自我)」の世界を頂点とする向上のことである。ここが現代文明に象徴される物質主義、個人主義の世界であり、またここは今見るように何れ必ず行き詰まる世界である。
一方「心の向上」とは概ね「第2の心」の世界への向上のことであって、この世界は既に東洋の仏教や儒教などが不十分ながら説いているのであるが、ここは肉体や時間空間を出離れた「心そのもの」の世界であり、岡にいわせれば東洋思想(第8識、第9識)を越えた「第10識、真情の世界」への向上のことである。
だから岡はここでは「菩薩道」という言葉を使っているのだが、これ以後岡は仏教の世界を突き抜けるため、この言葉は次第に使われなくなる。
それはともかく、明治維新は日本の存亡をかけた「大転換点」であったことに間違いはないのだが、更に広い視野で見てみれば、それは西洋の侵略を先ずは物理的に止めるという、いわば「前奏曲」に過ぎなかったのであって、実はこれからが本番の人類の未来をかけた日本が主演の「大舞台」となるのである。
つまり「今は日本民族の自覚時代だ!」と岡がいうように、今まで無自覚だった日本人が自らの心の構造を自覚し、確固とした哲学、理念によって新しい文明(政治、経済、教育、学問、芸術、宗教等)を世界に先駆けて切り拓いていく。
そして岡が最後に書いているように「まず日本が良い国を造って、世界の国々に手本を示すことが、人類を自滅から救う手始めだ」ということになるのである。
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