岡潔 「民族の危機」の解説
大阪新聞
横山 賢二
はじめに
今回は少し趣きを変えて、岡潔先生の大阪新聞への連載をご紹介したいと思います。これは1969年(昭和44年)の1月〜2月にかけて30回にわたり発表されたものでして、この時期における岡先生のご主張と日本への警鐘がわかりやすくコンパクトにまとめられています。
特にこの時期は「岡の教育論」の結論篇ともいえる「教育の原理」(復刻版「日本民族の危機」岡潔著に掲載)が完成された頃であり、多岐にわたる岡の思想分野の中でも「教育論」がこの頃の中心テーマとなっていまして、やはり先生はその「教育論」によって直面している日本の混迷の打開と、ひいては人類の滅亡を何としても喰い止めようとの思いがあった訳です。
しかし、残念ながらあれから40年、教育界の現状はより酷くなることはあっても、基本的には今日もなお当時とほとんど変わらないというのが実情でしょう。
その「岡の教育論」に関しましては、先生ご自身が述懐されていますように、1949年(昭和24年)に奈良女子大学に奉職されましてから、女子大教授の立場上必然的に本格的な教育論の研究に入り、「心の発達曲線(次元は全く違うが今日の発達心理学)」、並びに「岡の大脳生理」という教育における二本柱を順次解明していきつつ、1969年には先程の「教育の原理」とその補足版である「教育の新原理」(岡潔著「曙」に掲載)を発表することにより完結しているといっても良いと思います。
つまり、「岡の教育論」は岡先生の晩年初期、中期、後期とわけて、晩年初期の中心テーマという位置づけになる訳です。
さて、今日の世界各国は当然ながら、「教育」を国家存亡の最重要課題としているように見えますが、我が日本にとりましても「岡の教育論」が混迷を深める日本社会の再建と、世界の未来を荷う真に日本人らしい人材の輩出のためにも何よりも待たれるのでして、文部科学省をはじめ今日の日本の教育界は全力をあげて、この「岡の教育論」に遅れ馳せながらも早急に取り組まなければならないと私は思うのです。
目 次(下の項目をクリックしてお読み下さい)
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1】 均衡を欠く日本 (共産化した大学自治会)
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2】 戦後消えた愛国心 (心の安定と生きがいをもて)
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3】 自然科学 (〝生命〟の疑問には沈黙)
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4】 無差別智 (人は物質的自然に住めぬ)
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5】 真我と小我() (仏教の根底を信じよ)
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6】 愛国とは真我 (物質主義は小我ふやす)
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7】 義務教育のあり方 (だれが教えるかが大事)
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8】 教育は師道なり (教える先生で左右される)
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9】 大切な男女問題 (人の中核は生後3年で)
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10】 よい胎教が必要 (短時間でも清く高い心境へ)
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11】 大切な〝童心の季節〟 (生後8ヶ月で情緒が)
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12】 向上の意欲を (意欲-感情の季節に)
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13】 麦を育てるように (「自我発現の季節」の教育)
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14】 昆虫人間をつくる (〝小我の芽〟を抑えねば)
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15】 情緒の芽生え (一歩誤れば名刀さびる)
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16】 「悟り識」欠けば野獣 (月ロケットは低い知力)
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17】 神代から「悟り識」 (開けていた日本民族)
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18】 「無差別智」の働き (不思議な数学上の発見)
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19】 発見の鋭い喜び (アルキメデスがよい例)
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20】 心打つ真の善行 (意識しないだけに崇高)
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21】 美を創造する情緒 (東洋に裸体画はない)
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22】 知的ルンペン (教育に毒された大学生)
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23】 裸で触れ合う「師道」 (松陰の松下村塾がよい例)
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24】 〝時〟を食べる人間 (知、情、意、感覚を養うため)
【
25】 人格の形成 (小学校で大切な歴史教育)
【
26】 ソビエットが祖国 (治せぬひどい〝偏執狂〟)
【
27】 道義と理想 (学問は大学3年から)
【
28】 中共の属国になっても? (何でもかでもの〝安保反対〟)
【
29】 作れ「子を守る会」 (ひどい日教組の教育)
【
30】 明治維新に10倍の危機 (日教組の行動は計画的反逆)
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