「民族の危機」
【17】 神代から「悟り識」 (開けていた日本民族)
昭和44年(1969)1月 - 2月
大阪新聞
胡蘭成氏は語を継いで言う。日本民族は神代()の昔から、漢民族は黄帝()の昔から悟り識が開けている。
他に悟り識が開けていた民族としては、昔印度に住んだ人達がそうであったが、国が亡びてしまった。またかってのメソポタミア民族、かってのエジプト民族もそうであったが、この人達の国には後に奴隷制度が出来たために、自ら汚れて亡んでしまった。
これ等の民族は皆同一民族の支族である。親近感が非常に深い。私も日本民族と漢民族とは、今から4万年位前に2つに分かれたのだと思う。それで胡蘭成氏に中華の伝説によって、漢民族の起源をしらべて貰ったら、今から30万年前となったのである。
それで私は古事記の始まりは30万年前だと言っているのであって、これは人類の持つ唯一の文献によってのことなのである。
胡蘭成()さんは日本の万世一系の皇統と中国の湯武革命()とは万邦無比()の政態だと言っている。湯とは殷()の成湯王()が夏王朝に代わったことを言い、武とは周の武王が殷()(商)王朝に代わったことを指すのだが、ただそれらだけを言うのではなく一般に丁度よい時に革命があることを指しているのである。私はそういう見方もあるのかなあと思った。
全く感心するのは、胡さんが筑波山の麓で日本の青年たちを集めて教えているのだが、天照大御神の御神体である御鏡を拝ませていることである。
日本民族は神代の昔から悟り識が開けていたと言っていることといい、日本人でさえごく少数の他はわかっていないことを、異邦人である胡さんがこんなにずばりと言い切るとは。
胡さんは更によく神道を知ろうとして、各地の神宮神社に参拝している。日本はここまで行き詰まったら、維新(中国ならば革命)がいると言っている。
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