(※ 解説5)
「物質が諸法則を守る」、これについても私なりに考えるところがある。それは自然科学は学問として、物質が法則を守る、その法則の数々を発見して得意になっているが、それだけでは完全な説明とはいえないと思う。
むしろ不思議なものはそれから後で、それら諸法則が勝手にバラバラに働かず、美事に統一を保っているということである。もしこの統一性が宇宙に働いていなければ、宇宙はこのように整然とした運行を営むことができるはずがないではないか。
それでは一体、何がその統一性を支えているのか。それは遺伝子工学の権威、村上和雄さんのいうように学問の世界にサムシング・グレイト、宗教を持ってくるより仕方ない。
だから自然科学という学問は、仏教の唯識論でいう第9識、つまり宇宙に知的法則の中心があるという宗教を仮定しなければ、本当は成立し得ないのである。だか、自然科学者は少数の例外を除いて、それに目をふさいでいるのである。
(※ 解説6)
医学について。現代医学は自然科学の一種ですが、岡はその医学について別のところで次のようにいっている。
「例えば医学に付いても、大体医者と云うのは薬で直すのが一番多いでしょう。それで、ある身近な医者に『薬はどうして効くのですか?』と質問した。薬が効くと云う事は考えてみれば実に不思議なんですよ。それで質問した。そうすると『何故効くのだか分りません』と云う事でした。それが人知の現状です。医者は薬が何故効くか分らないんだけど、こう云う症状の時には、こういう薬を飲ませると効くと云う経験を沢山持っている。それだけなんです。」
そういうことで、これでは医学は厳密にいえば、岡がいうように学問とはいえないのではないでしょうか。基本的にいって自然科学全般は、それは単なる「生活の知恵」であって、「自然科学は本質的には、道具を使う猿の知恵と何ら変わるところがない」と岡は明言するのです。
それのみか、自然科学の危険性について、岡は晩年、ビタミンCの発見者であるセント・ジェルジの著した『狂った猿』という本を度々話題に上げ、その新聞広告の文句「この本は自然科学を過信している人類の愚かさと狂態とを説いたものであり、このままでは人類は遠からず滅び去る」という言葉に大いに賛同している。
だから、岡に言わせれば、人類は今や「狂った猿」なのである!
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