(※解説1)
ここは極く短い文章ですが、私には大変大きなヒントとなったところなので、敢えて拾い出してみました。
「アインシュタインはそれ(ニュートンの時間)を少しもじったともいえますし、そのままだといえるかもしれません」とは数学者岡潔でなければとても言えない時空論ではないでしょうか。
既に仏教を学んでいる岡は、第1の心(自我)の世界は「時間空間の中に物質がある世界」だというのですが、第2の心の世界はその時間空間を超越している(これが本当の心の世界)というのでして、現代物理学の最先端のアインシュタインの説く「時間空間」というものも、所詮は第1の心の外のものではないという推測がつくわけです。
後にも出てきますが、「欧米人は時間空間のない世界など、逆立ちしても考えられない」と岡はいっていまして、この辺にも東洋と西洋の世界観のギャップを垣間見る思いがするのです。
「時間空間は先験観念である、自分はこれらなしには考えられない」 カント
(※解説2)
ニュートンとアインシュタインにまつわる岡先生の貴重なコメントを友人の胡蘭成が残してくれていますので、それを次に挙げてみます。
「私は岡潔先生に叱られたことがある。去る秋、和歌山の座談会で、私は学生の質問に答えるに、アインシュタインの相対論がニュートンの力学より複雑、進歩であったと言った途端に、これは俗説、口のすべりだったなと自ら気にするが早いか、岡先生の怒鳴りに遇った。『バカ、何がアインシュタインの相対論はニュートンの力学より進歩した、何が進歩して複雑になるもんか、進歩しては単純になるのだ』と叱った。」
(岡潔集 第5巻しおり)
これは如何にも岡先生らしいエピソードです。先生はたとえ激怒しても、言うことは本質を突いていて、誠に理路整然としているのです。そして、「進歩しては単純になる」が岡の思考の神髄です。
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