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横山賢二 新聞記事


【11】幼児の早期教育は危険

高知新聞 1994年(平成6年)4月26日(火曜日)

 

 テレビで見ると、最近、幼児の早期教育がますます盛んなようです。私は、これは非常に危険なことではないかと考えます。

 と言いますのも、例えば人の一生とは、自分という家の建物を、建て上げるようなものです。

 成人して家は一応完成します。が、その後も高層ビルのように、次々と階を積み重ねていくわけす。これが人の一生です。しかし、その前に大事なことが一つあります。

 それは建物の基礎固めです。これを怠りますと、その上に家を建てれば建てるほど、家は基礎から傾きます。

 この基礎固めの時期が、人の生い立ちで言うと、生後三カ年の、「童心の季節」です。

 この時期には自我はなく、はっきりした時間、空間の観念もありませんし、ものの訳も意義も、まして大人の世界の実利観念など皆無です。

 だから、大人から見れば何の役にも立たないことを、子供は繰り返し、繰り返し練習します。しかし、この無駄と思えることを、その時期に十分に経験しておきませんと、その時期の地固めが不十分に終わってしまいます。まして、大人の世界の知識を慌てて詰め込むことは、逆に非常に危険です。

 人の個体の発生を見ましても、お母さんのおなかにいる間に、単細胞から哺乳類までの数十億年の歴史を繰り返します。

 生まれ出て後、「童心の季節」では、人類六十万年の歴史を繰り返すわけです。

 あなたのお子さまが、この二十世紀の学問に手を着けるのは、もう少し後からでも良いとは、お思いになりませんか。

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