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横山賢二 新聞記事


【12】いじめ問題と二つの人間観

高知新聞 1994年(平成6年)12月30日(金曜日)

 

 このところ、子供たちのいじめと、それによる自殺という問題が、大きく取り上げられています。これは、この問題が、ついに切迫したところまできてしまっていることを、示すものです。それで、今の教育を原点に立ち返り、人間観というところから、考え直してみようと思います。

 戦後、アメリカ文明が、日本へ入ってきました。その特徴は個人主義です。

 簡単に言えば、「この世で一番大事なのはあなた自身だから、何よりも自分の知識、能力を高めることに専念しなさい。そしてそれによって人の優位に立ちなさい」という思想です。

 考えて見ますと、こういう思想でなければ、今の受験戦争、つまり、教育における競争原理は、生まれるはずもありません。

 実際、学校や塾では、勉強はもはや競争のための道具になっていますし、今は、スポーツが大変盛んですが、見ようによっては、このスポーツとて、体力によって 、人に勝てと教えていることになります。

 ところで、昔、「二十四の瞳」という映画がありました。確かあれは、十二人の児童たちと一人の先生との心温まる物語だったことを記憶しています。

 そこには果たして、個人主義や競争原理があったでしょうか。あるのは皆が心を一つにした教育でした。その底に流れるものは、「人の喜びを喜びとし、人の悲しみを悲しみとする」という思想です。これが日本本来の教育、つまり心の教育です。

 私たちは虚心に帰って、これら二つの全く対立する人間観を基に、教育を一から考え直さなければならないと思うのです。

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