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横山賢二 新聞記事


【21】混迷の時代照らす 岡潔「情緒の教育」

高知新聞 2001年(平成13年)11月29日(木曜日)

 

 教育改革が声高に叫ばれ始めて年久しくなりますが、 日ごろ耳にする教育論議には何か物足りなさを覚えます。「心の教育」と標語的にはよくいわれますが、それでは心とは何か、人とは何かと深く尋ね入りますと、答えられる人は少ないものです。

 今を去る四十年ほど前、世界的数学者でありながら、ついには専門の数学を捨て去り、日本の進路や教育に警鐘を乱打した人に岡潔という人があります。文化勲章を受賞し、一躍有名になりましたので、ご記憶の方もあろうかと存じます。

 先生は晩年、人の本質は「知」ではない、「情」である、いわゆる人の心とは「情」のことであると看破せられ、「情緒の教育」を提唱されました。今に残る「情操教育」という言葉も先生から出たものです。

 また、それまでだれも試みなかった、人の心の内面的生い立ちとその育て方を克明に描き上げるとともに、今流行の右脳左脳理論とは全く趣を異にする独自の大脳生理学をも創造されました。

 先生没後二十数年、それらの貴重な遺産に耳を傾け、目を注ごうとする人は少なく、著書もほぼすべて絶版という状態が続いてまいりましたが、本年はくしくも岡潔生誕百年に当たりまして、ついに長年の沈黙を破り教育論「情緒の教育」が出版の運びとなりました。

 この先の見えない混迷の時代にあって、現代によみがえった日本の誇る大天才化学者の不朽の名著に、ぜひとも注目していただきたいものです。なお本は十二月上旬には店頭に並ぶ予定です。

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