「人とは何か」
【5】 トランジスターの女工さん
ところでわたし、百姓の場合は上手く行ってましたが、工場の職工達にたいして果して上手く行くだろうかと、少し危惧の念を抱きました。それでソニーの厚木工場へ行ってみた。工場長の小林茂さんに案内してもらったんです。
あそこはほとんど東北の田舎から出てきてる娘さん、中学を卒業したばかりの娘さん。で、ちょうどトランジスターの部分品を作ってましたが、これ実に細かい細工ですが、全く無心に働いている。そして目にも頬にも生気があふれている。
小林さんの話では、トランジスターの型を変える時、古い型に別れを惜しんで泣くと云います。自作自受は完全に行われてる。実際こんなふうにして3年間働いてますと、、顔も仕草もだんだん麗わしくなっていって、郷里へ帰るとお嫁に引っ張りだこだということです。わたしは嬉しくて涙が出ました。
で、自作自受は工場でも完全に行われている。本当の自分を自分だと思えばいい。本当の自分を自分だと思いますと、五尺のからだとその機能とを自分だと思いさえしないと思います。
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