「秋が来ると紅葉」
【10】 数学上の発見
創造についても同じですが、創造、クリエーション。発明っていうことと結びついて、非常に創造と結びつく訳なんです。私、数学の研究をやりました。それで数学上の発見は1つの創造です。で、それについて申しますが、これは同じことですから。1912年に死んだフランスの大数学者にアンリー・ポアンカレーという人があります。この人がいろいろ本を書いてますが、そして訳されて岩波文庫に載ってますが、そのうちに「科学と方法」という本がある。
その1章に数学上の発見というのがある。ポアンカレーはここで自分の数学上の発見を数々述べて、そうしてそのあとでこういってる。「数学上の発見は特徴、3つある。1つは一時にパッとわかってしまう、瞬間にわかってしまう。第2は理性的活動なしに起こったことは何時もない。しかし、その時期は随分ずれる。それも1年とか1年半とか経ってからのことが多い。
第3は結果が理性の予想の範疇の中にあったことはない、理性の予想通りであったことはほとんどない、大抵は予想とは違う。この3つの特徴を備えているが、これは如何なる知力の働きによるのか、誠に不思議である」と、そう書いている。
それで、この問題はヨーロッパの文化の核心に触れた問題ですから、それでフランス心理学会が早速これを取り上げて問題にして、当時の世界の大数学者に、「あなたはどんな風にして数学上の発見をしておられますか」と問い合わせた。その返辞の大部分はポアンカレーがいった通りだった。これで問題は確立した訳です。
しかしながら、その後この問題は解決に向かっては一歩も進んでいない。それはフランス人は、まあヨーロッパ人はっていっても一緒ですが、2つのことを知らない。頭頂葉に宿る心がある、第2の心があるということを知らない。もう1つは無差別智というもののあることも知らない。これじゃあ解決に向かって近づくはずはないのです。
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