「嬰児に学ぶ」
【7】 天皇無所有の思想
共産主義の歴史家は天皇は搾取階級だと、そういってます。ところが天皇家に伝わる家憲()は、天皇は一物をも所有してはならない、これが家憲です。それで例えば、万葉集の舒明()天皇の御集()を見ますに、
夕されば小倉の山に鳴く鹿は
今宵は鳴かず寝宿()にけらしも
仁心()は、といったらお情け深いこと、鹿にまで及ぶ。また明治天皇のお歌は、
目に見えぬ神に向いて恥ぢざるは 人の心のまことなりけり
ところが明治天皇は目覚めてられた、確かに目覚めてられたに違いないと思う。そうすると無量の神々がいることを、その神々は自分の心の底まで絶えず見通していることを、これを知ってられたんです。本当にそれがわかるんだから、明治天皇は寝ても覚めてもそう思ってるより仕方がない。だから明治天皇は寝ても覚めても、
目に見えぬ神に向いて恥ぢざるは 人の心のまことなりけり
だった訳です。この2つのお歌で暗示してるものは天皇家に伝わる家憲、天皇無所有の思想です。天皇は神々の国土人民を預かって、責任を持たされているだけだと思うんです。
猶、「宮中秘聞録」という本。さきの、多分、侍従次長をしてられた木下道雄さんがそういう本を書いて、今上()天皇のことを書いてられます。お読みになると更によくわかるでしょう。ともかく明治天皇や今上陛下を搾取階級と思う人はあるまいと思う。
それを共産主義の歴史家は搾取階級だといってる。この一例でもわかりますように、共産主義というのは知性の範囲における存在ではありません。では何かというと、狂信者の集団です。「左手にコーラン、右手に剣」というやり方です。誠に迷惑な話です。
|