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2015.08.13up

岡潔講演録(16)


嬰児(えいじ)に学ぶ」

【10】 成壊(じょうえ)(こう)

 ところで、今いいました通り、世界は火の燃え盛ってるような世相です。これを詳しくいいますと、第1の心の世界は欲界と釈尊はいってる。欲界には「成壊の劫」というものがあって、避け難い。成は「なる」、壊は「くずれる」です。成の時期には何でもできていく。しかしながら、どんなに営々と作り上げていっても、壊の時期が始まるとどんどん(こわ)れていく。

 今、西洋文明は壊の時期に入ったのです。その1つの現れが世界を覆うている大学問題です。大学の壊れ方は、理屈なしに壊れていってるでしょう。あれが壊の始まりです。やがて国も滅び去り、人も滅び去る。これが壊の時期。欲界にいるものは皆そうなると釈尊はいってるんです。

 だから放って置きゃあ、人類の滅亡まで間がないんです。さっき火の燃え盛ってる世相でいったんでもわかるでしょう。だから放って置きゃあ 壊の時期、これはもう全滅です、人類ね。その始まりが大学問題。あんな風な壊れ方で壊れると、俄然、こんな壊れ方で日本の大学が壊れると思ってなかったでしょう。これは欲界の壊の時期、西洋文明の崩壊です。放って置きゃ、人類滅亡する。

(※解説10)

 「劫」とは仏教用語で辞書には「宇宙の生滅などについて、きわめて長い時間の単位」とある。そして「成壊」とはここにいう「生滅」のことである。岡はこの時期「劫濁(こうじょく)」という言葉もよく使っている。長い年月の濁りがたまった状態ということだろう。

 「今、西洋文明は壊の時期に入ったのです」と岡はいっているが、果して我々にその認識があるだろうか。私から見れば、我々はまだまだ西洋文明に盲目的に追随しているか、もしくはその西洋文明の間違った手法によって今日の危機の打開を、相変わらず図っているとしか思えないのである。

 しかし、今日の人類の行き詰まりの原因は、第1の心の西洋文明にあったと認めるか認めないかが、焦眉の急であると私は思うのである。私は今までこの解説で、岡に倣ってそれを考える材料を提供してきたつもりであるが、是非皆さんにもそれについてもう一度考え直して頂きたいものである。

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