岡潔講演録(17):「1969年の質疑応答」解説:【10】財産の切り売り
岡潔講演録(17)
「1969年の質疑応答」
(岡) あれ(奈良女子大学)、丁度、昇格した時でね。いやあ、家族扶養できなくなったんですね。財産を切り売りできるだけしてしまって、何にもなくなった。いやあ、研究などというものは教えてちゃあできんのですよ。じゃまになります。だから売る物がある間は切り売りしてたんです。なくなってしまったから、そうすると家族扶養できなくなって、それでどこでもいいからっていったら、丁度あそこ昇格したから、あそこへ勤めるようにと、それで勤めたんです。それだけのこと。(笑)
これが岡の人生の岡みずからの証言である。岡の人生の前半は前人未到の数学の世界の開拓のためにみずからの財産を切り売りし、その後半は行き詰まっている人類に未来を切り開く思想を得るために、やはり財産を切り売りして命をつないだのである。
しかもその結果は、いまだに岡を真に理解する人は少ないのであるから、それを想うと私は大天才のひたむきな自己犠牲に畏れ多くも頭が上がらないのである。
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