(※解説18)
ここは世界の音楽の規準を大脳生理から説明した、岡の資料の中でも稀なところであって、ここには人類のもつ音楽の規準が集約されていると思う。
岡はドビッシー以後は「側頭葉」の音楽であり、西洋の古典音楽までは「前頭葉」の音楽、つまり「第7識」の音楽というのだが、そうすると孔子の作曲した「幽蘭の曲」は「頭頂葉」の音楽というのだから、それは「第9識」の音楽ということになる。
更にまた、岡は沖縄の民謡「沖のえらぶ島の子守唄」は真に日本的情緒から生まれた曲だといっているから、それは多分日本の伝統的な民謡と同じく「第10識」の音楽ということになりそうである。
というのも、日本の伝統的な民謡には1つの言葉にひたすら情(こころ)を込める「小節」というものと、唄う者と聞く者とが一体となる「相の手」という「情の世界」の特徴がよく現れた、世界では稀な表現方法があるからである。その中でも特に私が好きなものは、富山県の民謡「おわら風の盆」の唄と踊りであって、この踊りの仕草は正に「第10識」の日本的情緒そのものである。
では、残された「第8識」の音楽とはどういうものだろうか。私の推測ではあるがヒンズー教などを考えると、なんだか怪しげな魅力をたたえるインドの古典音楽あたりになりそうである。私にはなんだかそんな気がするのである。
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岡潔講演録(17)1969年の質疑応答
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