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2015.2.14up

岡潔講演録(17)


「1969年の質疑応答」

【21】 無様なおでき

(岡) まあ、太平洋岸をずっと見ると、まるで白蟻の巣だなと思う。どう見たって無様です。ああいう自然を、日本の自然は実に美しいと僕はいってるが、ああいうのどう見てるか。それはきれいな顔に今「おでき」ができてるようなものだと思ってる。そのうち取れると思うんです。あれはどーう見たって無様です。だけどやがて取れる。

(岡) しばらく経って使えなくなったら、そんなもん1億が衣食住できりゃいいんでしょう。それ以上の物資なんか、あったら邪魔になるでしょう。幸福というのは心の幸福なんです。物資が多かったら幸福ではあり得ないっちゅうのが普通です。そうすると使えなくなるでしょう。そうするとしばらく経つと廃虚のさびがついてくる。この辺から美といってます。「おでき」が治りかけてくる。ああいうの「おでき」という。大阪も「おでき」ですよね。

 えーと、いわなかったかしら、いったかしら。四季のあるのは揚子江以東です。だから国生み、これは天上で成されたんだけど、それを基にしている地上の島々は大体日本列島です。まだ、この辺の自然だけがちゃんと日本民族なんです。

(※解説21)

 岡によると今繁栄を誇っている西洋型近代都市は、やがて消え去るということだろうか。そうでないと人類は永きを保ちえないと私にも見える。それではこれから一体、どう推移していくのだろうか。

 我々が憧がれてきた近代都市を岡はハッキリ「無様だ」といい、まるできれいな顔にできた「おでき」だという。更に「幸福というのは心の幸福なんです」、「物資が多かったら幸福ではあり得ない」ともいう。ブータンの人々が聞いたら、手を打ってうなずくだろう。岡がいう「常識」は随分と我々の「常識」と馳けはなれている。

 自然についていえば、「白砂青松」「山紫水明」が本来の日本の姿であって、我々は明治以後西洋の「開発」という思想にかぶれて、日本の自然を取り返しのつかないものにしてしまったのではないだろうか。

 因に、日本の自然であるが、これは日本民族がこの地球上に渡ってきて、ゆくゆくはこの日本列島に居を定めることを日本の神々が既に見越して、60万年前からこの日本の繊細優美な自然を準備しはじめたのだと晩年の岡はいっている。

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