「1969年の質疑応答」
【23】 岡の嘆き
(質問) 先生は今までの長い人生の中で、一番自分の弱さというものを感じたことがおありですか。
(岡) ありません。私は日本が滅びなければ良い!それ以外なにも考えてやしない。弱さも強さもない!
大体、「自分の」ってものがない!
(質問) 今までに一番強く感じたことというのは。
(岡) ありません。この、日本は心配だって書くんです、本にね。そうすると心暖ったまる思いっちゅうような手紙をもらうと、そりゃあ無力だなあと思いますよ。思いますけど仕様ない、それでもやっぱり日本は心配だと書かなきゃ。そしたら心暖ったまる思いっちゅう手紙もらう。それしかし、仕様ないじゃないですか。
(質問) 特にお聞きしたいのは、先生の私達くらいの年代の時に、人生というものをどのようにお考えになって今まで歩んでいらっしゃったか・・・
(岡) えーと、高校のどれくらい。(笑) 大学ですか。
(質問) 24です。(笑)
(岡) 僕はその頃、まだ数学の研究のことばかり考えてたでしょう。どうにか自分にもできそうだと思って、数学へ変わったのが大学2年だから。いやあ、フランスへ洋行しようと思って、数え年29の時、シンガポールへ行ってひどく懐かしかった。それで数学の研究なんていうのは、そんなに第一義的に取るべきものではないんだと初めてわかったんです。あなた方の頃はまだ数学の研究ばかり考えてたでしょう。
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