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2015.2.14up

岡潔講演録(17)


「1969年の質疑応答」

【25】 日本民族の定義

(岡) いやあ、これはどーしたって。つまりね、どこ間違ってるかというと、頭頂葉が主人公であって、前頭葉は道具なんだと、それをよく教えりゃいいと思います。そして日本民族っていいましたが、日本民族ったら一大家族ですから、動物は皆家族の一員だし、植物も皆家族の一員だし、雨も風も皆家族の一員だし、欧米人は眠って火の燃えさかる夢を見ている日本民族なんです。そういう風なのが日本民族なんです。

 「(あめ)が下を覆うて家とすべし」と神武天皇がいわれたと聞いてますが、この方向のものでしょう。人だけではない、まして欧米人が違うんでもない。が、現在は眠って夢見てるんだから、いっしょに働いてくれたって無理ですね。どうすれば起こすことができるか。起こしたら目覚めた日本民族、今は眠ってる日本民族。そういう意味です。いや、これ(前頭葉)が道具で、これ(頭頂葉)が自分でとはっきり昔、教えなかったんでしょう。そう教えれば、(うまく)行きますね。

(※解説25)

 岡のいう「日本民族」というものの定義がここでは表明されている。西洋人は「第1の心」の世界に住んでいるから、人と人とが対立し、人と自然とも対立する。それが「個人主義」であり、自然に対しては「物質主義」である。

 しかし、日本民族は「第2の心」の「情の世界」に住んでいるから、人と人とは「人の情」でつながっているし、人と自然とは「風情」でつながっていると見るのである。

 岡の別の表現をかりれば「自分は自分、人は人という名の自分、自然は自然という名の自分」ということになるのであって、この神武天皇の有名なお言葉は、そういう世界観から生まれたものであると岡はいいたいのである。

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