「創造の視座」
【12】 大脳側頭葉①
ところで、アメリカに科学雑誌がある。私その名は知りません。しかし、その愛読者を2人知っている。私はその2人の愛読者から3つのおもしろい話を聞きました。それをお話ししようというのですが、それではあまり頼りない。それで2人の愛読者の1人のお名前を申しますと、それは岩波新書の「脳の話」を書いた時実利彦先生です。
大脳生理学は、大脳を5つの部分に区分している。その1つに大脳側頭葉というのがある。大脳の耳の辺に左右2つに別れておりますが、連絡がついているから、1つとみなしている。この大脳側頭葉は、大脳のうちで機械的なことを司っているところなんです。知覚、機械的判断、記憶、言語、そういうことを司っている。
機械的な働きだから、ここは調べやすい。それでアメリカの医学者や心理学者が好んで側頭葉を調べた。それで側頭葉の働きがだんだんよくわかってきた。ところが、あるところを過ぎると、だんだん不思議になって、わからなくなっていった。
それはどういう点においてかといいますと、大脳側頭葉を機械だとすると、これを動かすに要する電力は10億キロワットと算定される。しかるに、人の場合は実際は25ワットぐらいしか使っていないらしい。不思議だというのです。
これは側頭葉のいろいろな働きを、時間、空間のないところでやって、その結果を時間、空間のあるところへまた持ち出すんだろう、こんなふうに考えられる。時間、空間のないところにはエナージーも要りませんから、そこで太閤さんは、墨股城を安全な地で組み上げて、プレハブ式に敵の危険にさらされているところへ運んだ。
そんなふうに第2の心の中で機能を組み上げて、それを時間、空間のあるところへ持ち出しているんだろう。そんなふうに想像される。ともかくアメリカ人はそんなこと知りませんから、不思議だ、不思議だといっている。
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