(※解説13)
次に岡があげている側頭葉の数字は、「宇宙の原子の数をこえる」と「アメリカ合衆国の経費の1千万倍」。皆さんはこの数字が想像できるだろうか。私にはいまだにピンとこないのであるが、正にこれは超々天文学的数字である。
今から50年以上も前にこの数字は出ていたのであるが、現代の脳科学者は側頭葉が「機械の座」であることも特定できていなければ、このような天文学的数字が既に出ていることも全くご存じないのではないだろうか。
最近、岡の本を出版することに尽力してくれて、岡には相当くわしい人に評論家の松岡正剛さんがいる。その松岡さんの解説にはこう書いてある。「岡の脳科学について言及しているところも、当時の学説に従ったせいもあるけれど、実はおもしろくない」と。
同じく別の出版に尽力してくれて、岡の初期のものを相当読んでくれているはずの脳科学者の茂木健一郎さんも、岡の大脳生理についてはなぜか一言も言及していない。一般の脳科学者は岡の本さえ読んでいないだろうから、尚更である。
この事実を一体、どう理解すればよいのだろうか。岡に相当詳しい人でさえこうである。一体何を読んでいるのだろうと私は言いたい。そこで私には1つのイメージが頭に浮ぶ。「曲ったものから真直ぐなものを見ると曲って見える」と。
松岡さんも茂木さんも共に著名な知識人ではあるが、岡の大脳生理にまだこれほど不案内であるところを見ると、まだ少うし「曲ったところ」が残っているのではないだろうか。岡のものがわかるためには「知識」は要らない、「真直ぐ」でありさえすればよいのである。
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