(※解説6)
ここも私には門外漢なので前項と同じく、岡の発言を別の角度から拾ってみたい。同じく「一滴の涙」より。
『この実数が存在すると云うことを証明しようと思っている大数学者が最早いないと、これを認めてもらうのが随分難しいでしょう。(中略)
この実数というものの存在が云えないんだから、直線上の点の全体と云うものが有るなどと云える筈がない。それなら時間などと云うものが有ると云える筈がない、ましていわんや空間などと云うものも。
大して違やしませんが、それが云えるなら実数の全体を考えた時、その間に矛盾が起こり得ないと云うことが証明できるなら、そしたらユークリッドの公理体系の間に矛盾がないと云うことまで証明できます。しかし、(実数の全体に)矛盾がないと云うことをよし証明したところで、(ユークリッドの)公理体系に矛盾がないと云うことと、そういうものが本当に1つ有ると云うことの間の開きは大きいでしょう。ところが矛盾がないと云うことが証明できそうにないんです。
そんな風で理論物理、他はとも角、時間空間がどうのこうのって、あれ後で更に複雑な空間を考えていますが、大体時間が有ると云うことが云えない。それから空間が有ると云うことも云えない。これは同じ程度に云えない。空間と云うのはユークリッド空間です。
そしたら後、どんなに骨折ってみたところで、理論物理で証明するなんて云うのは始めからできないに決まったことでしょう。少しは数学者の云うことも理論物理学者は聞いて欲しいですね』。
岡はこういっている。この辺のことについては、岡の資料の中では小林秀雄との対談「人間の建設」が最も詳しい。
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