「1971年度京都産業大学講義録第16回」
【3】 大脳生理学の無知
こんなこと、はっきり調べて行くには、西洋人は2つの過ちをおかしてる。1つは、目に見えないものは無いと決めてしまっている。もう1つは、大脳前頭葉は操るべきものであって、前頭葉に引きずられるべきものではないということを忘れてしまってる。忘れてしまってって、始めから知らないんですけど。
だから目に見えないものは無いと思うことをやめて、大脳前頭葉を操って調べ直さなきゃいけない。これは大勢の人が永くかかってやるべきことで、今こういうことをやっているのはわたし1人。とても詳しくわかりゃしない。だけど大勢の人が永くかかって調べ直すなら、よほどわかって来るでしょう。
ともかく情というものは、人体に最初現われるのは頭頂葉に違いない。それが後頭葉を通って、そして前頭葉に働きかけるらしい。その時その経路として側頭葉を通るのか通らないのか、もっとよく調べてみなければわからない。こう云うんです。
で、情が前頭葉に働きかける。そうすると前頭葉が動きだすんです。これはよくわかる。わたし前頭葉のことはかなりよく知ってる。なぜかと云うと、数学の研究を永くやってた。それで前頭葉という道具を充分使った。だからその前頭葉という機械の構造はかなりわかってる。
こんなもの、解剖したって勿論わかりゃしませんし、それから心理学的、大脳生理学的に観察したところであんまりわからない、働かしてみなければ。大体あんまり働いていない時を観察するし、自分で働かせてるのと、他が働かせて働いているのを端から見るのとでは大分わかり方が違う。これは自分で使ってみなきやわからん。それを使いもしないで、あれこれ云ってるのが大脳生理学者、心理学者です。何もわかってやしない。随分間違ったことを云ってる。が、これも困る。
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