岡潔 「1971年度京都産業大学講義録第16回」の解説
講演日 :1971年10月26日
横山 賢二
はじめに
この講義はこの1971年の中では大変重要であって、第10識「真情の世界」
に到達するまでに岡がしっかりとその足場を固め、知と情の関係と情の優位性を数学の方面から再認識しているところである。
もともとそのきっかけを得たのは、1965年に出版された「人間の建設」
の中で語られている、アメリカ人数学者ポール・ コーヘンの数学的実験に端を発するのであるが、それを岡は岡なりに煮詰めて「情的にわかる、知的にわかる」
という独特な考察にまでもってきたのである。そして、その結果はじめて「知の根底は情にある」という人類はじまって以来の結論を導き出したのである。
それに加えてこの結論に到達するいま1つの要因は、岡が中国人の胡蘭成と親交を結び胡蘭成が「知が大事だ、知が大事だ」としきりにいうのに対して、日本人である岡のいつわらざる直観である。それは日本人は「知ではなく、情が大事だ」と思っている、と。それに気づいたことが岡自身にも目から鱗で非常に大きかったのであって、これは胡蘭成自身も気づかない、胡蘭成の最大の功績である。
それに加えて、孫の始が生まれてきたことで、仏教もいっていない日本人特有の心の層があることがわかってきたことである。
主にこの3つの要因によって、この翌年早々には第10識「真情の世界」を発見することになるのであるが、この講義はそういった雲行きの中でなされたものである。
目 次(下の項目をクリックしてお読み下さい)
【1】 人の心の知情意
【2】 本当の個性とは
【3】 大脳生理学の無知
【4】 そういうもの「X」
【5】 情的にわかる、知的にわかる
【6】 情と創造
【7】 大宇宙の本体は情
【8】 前頭葉的現象
【9】 頭頂葉の個性
【10】 正岡子規と出世主義
【11】 運動会の登竜門
【12】 刺激と自己中心
【13】 寺田寅彦の「からすうりの花と蛾」
【14】 旅は道づれ世は情け
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