(※解説10)
今は「アメリカンドリーム」という言葉がある。これは当然「出世主義」の人生観から生まれた言葉ではあるのだが、いわば「第1の心」の1人勝ち指向の「出世主義」なのである。しかし、ここで岡がいっている「出世主義」はそれとは別の東洋で生まれた「第2の心」の「出世主義」なのである。そこをよく見なければならない。
この「第2の心」は利己的ではない「無私の心」といってよいのだが、実は「第2の心」をより詳細に見ていくと第10識「真情」、第9識「真如」、第8識「アラヤ識」と別れるのであって、第9識(知)、第8識(意)と下に下がるに従って不純物が混在してくるのである。
その一番の特徴が「権威主義」、つまり「偉さ」であって、中国の儒教やインドの仏教は欠点として、その「権威主義」が非常に強いのである。この「偉さ」が人生観と結びつくと必然、この東洋の「出世主義」になるのである。
岡がよく例にあげるのが「身を立て名をなし、以って父母の恩に報ゆるは孝の終りなり」という孔子の言葉であって、これが東洋の立身出世主義というのである。
日本は本来「情の国」であって「偉さ」をいわない国柄なのだが、既に明治以前に儒教、仏教の影響を受けて非常に「出世主義」を目標にしていたのであって、この正岡子規も例外ではなかったようである。岡はある講義の終りにこういっている。「偉いとか、あかんとかいわんこと。名誉心を大切にしないこと。誠に卑むべきことです!」
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