(※解説9)
私も以前に岡家の本棚にある「抱朴子」を手に取って見たことがあるが、その中に載っている絵には異様な雰囲気を感じたものである。それが岡のいう時代の古さという情緒だろうか。
岡は「ところで私は、あの2枚の挿し絵のためだけにでも、この『抱朴子』を買っただろうと思う」といって、その絵の持つ時代の古さに強い印象を受けているようである。
しかし、一方で「熊谷さんの絵には、時代が古いという情緒を表わした絵はありません」といっている。現在最高の「如の里」の作家でさえそうである。
しかし私にいわせれば、私の絵の会の大野長一の絵の幾つかには、まさしく時代の古さを感じさせるものがある。例えば真っ白い「雪のからまつ林」の絵などは、岡のいう「万古の雪」という気がするのである。大野の絵は微けさが基調になっているから、その良さは仲々写真には出にくい。できうれば実物を見て頂きたいものである。
猶、「抱朴子」の絵の方ではなく書かれてある内容については、岡は次のようにいっている。
「日本も中国も頭頂葉のあることは知ってますから、本当のことはかなりあるんだけど、例えば中国で老子の教えなんていうのは本当です。が、それに尾ひれがついて仙術という風な形で伝わってるでしょう。抱朴子とか列仙伝、神仙伝、山海経、荒唐無稽なこと書いてある」
「秋が来ると紅葉」1969年9月より
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