(※解説9)
岡はこれより3年前の1969年のどこかの録音の中で、確かこんな風にいっていたと思う。「日本人の日常を見直すことによって、全く新しい思想が生まれる。ここまで来れば外に頼るべき何物もない。日本人の心の中に全てのヒントがある」と。
私はそれを聞いた時、岡の日本人に対する自信に、ちょっとそれは言い過ぎではないかとさえ思ったものである。しかし、こうして蓋を開けてみれば、実はこういう理由があったのである。それが西洋の「第1の心」ばかりではなく、東洋の「知」との違いである。
そういう目で見れば、ここも岡は日本人の内面をよく見てるなあと私は思う。「みんな情を被い隠して知や意の言葉でいっている」。正にその通りだ。私の日常を振り返ってみてもそうだから。
さて、孔子の道徳であるが、ここも凄いところであって、長く人類を導いてきた東洋思想の根底が正にここでひっくり返っている。「道徳を知でいうから、何が道徳で何が不道徳か聞かなきゃわからん」。「人本然の情に照らしてみれば、道徳なんて説明するに及ばん」。日本人なら「成程!」と思うところである。
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