(※解説8)
ここは明治維新前後の国内情勢が、小学生でもわかるように説かれている。岡との対談録(岡潔集、第3巻)のある司馬遼太郎さんでも、このような歴史的大局観は持ち合わせていないのではないだろうか。そればかりか司馬さんの全集に、その岡との対談録が載っていないのは誠に不思議である。
さて明治維新であるが、西洋列強の侵略をいかに喰い止めるかということで明治維新は成されたのだが、一方で西洋に対抗するため大急ぎで西洋文明を導入し、それに付随する「第1の心」の西洋思想をも全般的に取り入れてしまったというのである。
それともう1つ明治維新と引きかえにしたものは、日本人の「自覚」である。宣長が折角「漢意清く捨てらるべし」といって儒教仏教を批判し、「日本の心」に戻れというところまで行ったのだが、西洋文明の導入に急ぐあまり気づきかけたその「自覚」もまたうやむやになってしまった。
岡の説くように第10識「真情」が「日本の心」である。東洋の儒教や仏教は第9識、第8識であり、西洋に至っては第7識の文明である。だから日本は第10識「真情」を自覚すべき時である
ー とまでは行かなくても、宣長は「漢意清く捨てらるべし」というところまで行ったのだから、もう一息だったと岡はいうのである。
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