「情を語る」
【12】 バケツの中の水は情緒
素粒子論は、物質も質量の無い光も電気も、みな素粒子からなっていると云う。素粒子には種類が多いが、安定な素粒子と不安定な素粒子とある。
不安定な素粒子は、生まれてきてまたすぐ消えていってしまっている。その寿命は、普通100億分の1秒くらい。しかしかように短命だけれども、非常に速く走っているから、生涯のうちには1億個の電子を歴訪する。
そう云ってますが、そうすると不安定な素粒子は、ともかく生まれてきてすぐ消えていってしまっている。安定な素粒子は、例えば電子は、絶えず不安定な素粒子の訪問を受けている。だから安定しているのは位置だけであって、内容は絶えず変わっているのだと ― 云わば不安定な素粒子はバケツに何かを入れてしきりにそれを運んでいるんだと、そうみえる。
そのバケツに入っているものは何か。私はそれは情緒だと思うんです。で、絶えず情緒が入れ替ってるから人は生きてるんだ、そう思うんですね。それが情であり真情である。
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